管理栄養士でフードコーディネーターの菱沼未央さんと一緒に製作した、「パンとごはんと…」シリーズを詳しくご紹介しています。
「パンとごはんと…」のシリーズの中で、最もシンプルなビジュアルの“セラドングリーンの陶器”を手掛ける【山イ窯】をご紹介します。
山イ窯では、シンプルで飽きの来ない器を製作していただきました。
実は、今回のセラドングリーンの陶器は発色が非常に難しかったのですが、山イ窯の高度な技術で製造を可能にして頂きました。
仕上がりの色を操る経験と技術
山イ窯の創業は1966年。先にご紹介した敏山窯や一洋窯と同じく、陶磁器の生産が急成長した時期です。
この頃は茶器を中心に製造し、天目・瑠璃という、鉄粉を混ぜたりする技法によって角度によって色が変わったり光彩を放つような色の商品を製造していました。
創業当時から、焼き上がりの色を大切にしてきた山イ窯ですが、1995年頃から、焼成技術を増やし、焼き上がりの色調を整える事や、釉薬も増やしていくなど、表現できる色のバリエーションを増やしていきました。
今回「パンとごはんと…」でお願いしている”セラドングリーンの陶器”は、そんな山イ窯の技術でも、色を表現するのが非常に困難な商品だったと言います。
窯の中は場所によって少しずつ温度が違います。この釉薬は、その温度差の影響を受けやすく、希望しているグリーンにならずに青色になったり、濃い緑になったり…
長年、色にこだわってきた経験を活かし、何度もサンプル制作そして、その難しい釉薬をうまく乗りこなす感覚を掴んでくださいました。
リスクの高い形状と品質管理
お皿を製作するうえで、実は大皿というのは製作上非常にリスクの高い形状なんです。
「お皿って普通にあって、そんなにリスクがありそうに思えないけれど…?」と思われるかもしれませんが、これが陶磁器制作ではよく出る話なのです。
お皿は面積が広いと言うことがあり、余分な物が付着したり、割れたり、ゆがんだりして不良品になることがとても多いのです。
山イ窯では、常に目に見えない鉄粉が工場内に舞っており、風の強い日などは、その鉄粉が焼成窯に入り込み、面積の広い商品に付着して黒粒が出来易く、日頃から不良品のリスクと戦っています。
また、お皿は平置き面積が広いため、一度に製造できる数量も少なく、そのリスクに見合うだけの生産が出来ないため、近年では特に大皿の製造をやめてしまう窯が多いのです。
そのため、皿の製造を続けている窯への需要が増えているので、山イ窯では、特に品質管理を徹底し、お客様の希望に添った物作りが出来るよう、日々努力をして製造を続けています。
シンプルだからこそ、少しのズレやブレが許されない商品を丁寧に作っている山イ窯。
今回お願いしている器達も、実際使ってみると、その使いやすさを実感します。
使いやすいというよりは、全くストレスがないと言った方が良いかもしれません。大きさ、重さ、手触り全てにおいて生活の流れを崩さない器達です。
そして、こだわり抜いた色も、脇役に徹し、盛った料理の魅力を最大限に活かしてくれます。
菱沼未央さんが理想とする「シンプルで、マットで、どんな料理でも受け止めてくれる器」を、是非味わってみてください。